【No.28】 湿度と新築ラッシュの国へ:抗菌・抗酸化の日本品質を、ベトナムの部屋にも

光を必要とせず、赤ちゃんやペットにも安全な次世代コーティング「Redox」と、植物由来の抗酸化剤「万生」。高温多湿と建設ラッシュが同時に進むベトナムだからこそ、この日本発の室内環境技術には勝算がある。二つのプロダクトが持つ科学的根拠と、その市場性を検証する。


【日越の空気を変える】「光」がいらない日本の抗菌コーティングは、なぜベトナムの部屋にも効くのか

見えないリスクは、新しい部屋ほど濃い(The Problem)

新築、あるいはリノベーションされたばかりの部屋には、独特の「新しい匂い」が漂います。多くの人がそれを心地よい変化の象徴として受け止めますが、その正体の一つは、家具・カーペット・木製パネル・塗料などから放出されるホルムアルデヒドをはじめとする揮発性有機化合物(VOC)です。既知の発がん性物質であり、呼吸器症状や皮膚刺激との関連も指摘されています。加えて、ドアノブや照明スイッチ、リモコンといった「よく触れる場所」には、トイレや洗面台に匹敵する量の細菌が付着していることも、衛生分野の調査で繰り返し示されてきました。

この「見えないリスク」は、日本の住宅・ホテル業界では長らく課題とされてきました。そして今、まったく同じ、あるいはそれ以上に切実な形で顕在化しつつあるのが、ベトナムの高級不動産・ホスピタリティ市場です。ホーチミンやハノイでは高層コンドミニアムやハイグレードホテルの開発が絶え間なく続き、「できたばかりの部屋」が街に溢れ続けています。年間を通じて気温と湿度が高いベトナムの気候は、建材から化学物質が揮発するスピードを速め、同時にカビや雑菌の繁殖にも適した環境をつくります。つまりベトナムは、日本以上に「新築特有のリスク」が凝縮されやすい市場だといえるのです。

「光」に頼らない酸化還元触媒——Redoxという答え

この課題に対し、日本の環境技術メーカーが開発したのが、次世代の酸化還元触媒コーティング「Redox(レドックス)」です。

一般的な光触媒コーティングは、効果を発揮するために紫外線などの「光」を必要とします。しかしRedoxは、食品添加物としても認められている鉄イオンなどの金属イオンが空気中の酸素と反応し、酸化と還元を繰り返すサイクルによって有害物質・菌・ウイルス・悪臭を分解します。光のない場所、たとえばクローゼットの中やベッドの下、天井の隅であっても24時間機能し続けるのが最大の特徴です。

もう一つ、Redoxが一般的な光触媒と一線を画す点があります。原料そのものの安全性です。一般的な光触媒の主成分である「二酸化チタン」は、近年欧州を中心に安全性基準の再評価が進むなど、より厳格な安心を求める声が高まっています。Redoxはこうした世界的な潮流にも配慮し、二酸化チタンに頼らない処方を採用。暗所でも24時間働く利便性と、グローバル基準の安心感を両立し、乳幼児やペットのいる空間でも、心から納得できる安心を届けます。

第三者機関による試験でもその性能は裏付けられています。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する効果確認試験では、24時間の接触で感染価が99.6%減少することが確認され、SIAA(抗菌製品技術協議会)の認証も取得済みです。抗菌性についてはJIS Z 2801、抗ウイルス性についてはISO21702の試験規格に基づき、いずれも活性値2.0以上という結果が示されています。一度の施工で効果が3〜5年持続するため、頻繁な薬剤散布や消毒作業に頼らずに、床・壁・天井を含む室内全体を長期にわたって守ることができます。

香りではなく「無臭」で応える——Banseiという選択肢

Redoxと並んで展開されているのが、100%植物抽出液による抗酸化ソリューション「万生(Bansei)」です。古くから伝わる和漢植物のエキスを用い、建材や家具から発生する有害物質を中和し、シックハウス対策に寄与するとともに、空間そのものの酸化を防ぎます。

万生の特徴は、香りで匂いを「隠す」のではなく、無臭の空間そのものをつくる点にあります。人工的な芳香剤やアロマは、香りに敏感な人やアレルギー体質の人にとってはむしろ負担になりかねません。無臭であることは、誰にとっても快適であると同時に、集中力の向上や頭痛・吐き気といった不調の予防にもつながるとされます。まるで森林浴(Shinrin-yoku)をしているかのような清浄な空気感を室内に再現する 、これが万生の目指す価値です。

なぜ今、ベトナムなのか

RedoxとBanseiを組み合わせた提案は、すでに日本国内のホテルブランドに向けても行われており、「清潔で快適な部屋」を掲げる客室コンセプトとの親和性の高さが確認されています。そして私たちは、この技術がベトナムの高級消費者層にこそ強く刺さると考えています。理由は大きく三つあります。

一つ目は、先に述べた気候と建設ラッシュの掛け合わせです。高温多湿の環境下で相次ぐ新築・改装は、ホルムアルデヒドや雑菌のリスクをより短いサイクルで再生産します。二つ目は、パンデミックを経たベトナムの消費者、とりわけ都市部の富裕層・準富裕層の間で、「清潔さ」や「健康」が可視化された付加価値として選ばれるようになったことです。SIAA認証や試験データといった客観的な裏付けは、価格に敏感でありながら品質にも厳しいベトナム市場において、説得力のある差別化要因になります。三つ目は、「日本製・日本技術」というブランドそのものが持つ信頼性です。ベトナムでは日本発の技術・サービスに対する期待値は依然として高く、RedoxとBanseiの紹介資料はすでにベトナム語版も用意され、現地の高級顧客層に向けた提案が始まっています。

赤ちゃんやペットにも安全な原料でつくられているという安心材料は、子育て世帯や高級レジデンスの居住者にとって、価格以上の説得力を持ちます。「一度の施工で数年間効果が持続する」という経済合理性も、清掃・消毒コストの継続的な負担に悩む施設管理者にとって魅力的なポイントとなるはずです。

技術を「翻訳」し、市場に実装する

私たちが一貫して大切にしているのは、優れた日本の技術やプロダクトを、そのままベトナムに「輸出」するのではなく、現地の気候・生活導線・消費心理に合わせて「翻訳」し、実装するという視点です。RedoxとBanseiというプロダクトも、その性能の高さだけでは市場には届きません。どのような顧客層に、どのような文脈で、どの言語とトーンで届けるべきか。現地の商習慣とネットワークを知る者が間に立つことで、初めて「良い技術」は「選ばれる商品」に変わります。

高温多湿という自然条件と、止まらない開発ラッシュという都市の現実。この二つが交差するベトナムだからこそ、日本の室内環境イノベーションには大きな可能性があると、私たちは考えています。

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