【No.23】 情緒を実務力に変える:ベトナムの「地の利」が支えた滑川とホイアンの物語

富山県滑川市の歴史的街並みと、世界遺産ベトナム・ホイアン。一見交わらない二つの地が、ひとりの女性メンバーの瑞々しい直感から始まり、15年にわたり進化を続ける「なめりかわランタンまつり」の舞台裏から、情緒的な価値を確実な実務力でビジネスへと昇華させる「越境プロデュース」の本質を紐解きます。


【文化を繋ぐ越境ビジネス】滑川の古い街並みに「ホイアン」の灯りが灯った日

1. ノスタルジーと「二つの越」が交差した瞬間(The Spark)

歴史の足跡が色濃く残る、富山県滑川(なめりかわ)市の瀬羽町(せわまち)。そこには、国登録有形文化財である「旧宮崎酒造」をはじめ、かつて宿場町として栄え、松尾芭蕉と曽良が歩いた瀬羽町の旧街道、時代の風情を今に伝える町家が立ち並んでいます。

この日本の伝統的な佇まいを目にしたとき、ベトナムと富山のつながり、歴史のロマンに胸を躍らせた女性がいました。弊社メンバーであり、自身も富山県出身、そして市場の黎明期から四半世紀近くにわたりベトナムの地に足をつけてビジネスを展開してきた人物です。この物語の主役は、まさに彼女です

「富山はかつて『越(えつ)の国』と呼ばれ、ベトナムは『越南(えつなん)』と書く。そしてここ滑川には、毎年夏にホタルイカを龍宮の使いと称える『ふるさと龍宮まつり』がある。古くから伝わる浦島太郎の亀は、実はベトナム中部からやってきたという一説を聞いたことがあった」

彼女の頭の中で、遠い昔、黒潮に乗って船で行き来していたかもしれない先人たちの姿が、鮮やかな映像として結びつきました。彼女が滑川の街並みに重ね合わせたのは、遥か数千キロ離れたベトナム中部の古都であり、世界遺産にも登録されている「ホイアン」の景色だったのです。黄色の壁の建造物が並び、夜になると色鮮やかなランタンの光に包まれるホイアンと、滑川の歴史的建造物が持つノスタルジックな空気感。それは時空を超えて、同じ海の記憶を共有しているのではないかという瑞々しい直感(インスピレーション)でした。

この歴史的ロマンに基づいた「気づき」を、当時、街の新しい活性化を模索していた滑川市観光課の友人に提案したこと。これこそが、後にベトナム航空が協賛するまでに至る国際的イベントの、ドラマチックな発端となったのです。

旧宮崎酒造も期間中はランタンなどで魅力的に飾り付けされています

2. 実行:ロマンを現実化する、地の利とロジスティクス(The Execution)

「古い街並みにホイアンのランタンを飾り、二つの越の国を繋ぐ」

言葉にするのは容易ですが、それを一過性のファンタジーに終わらせず、持続可能な地域イベントとして「実装」するまでには、泥臭く高いハードルが存在します。単にインターネットで安価な既製品を買い集めるだけでは、ホイアンの職人が手仕事で吹き込む本物の世界観や、人々の心を揺さぶる「温度感」を再現することはできません。滑川の歴史、そして彼女が抱いた壮大なロマンに敬意を払うからこそ、私たちは「本物」であることに徹底的にこだわりました。

ここで活きたのが、私たちが市場の黎明期からの歩みの中で積み重ねてきた知見と、現地ベトナムに深く根を張る「地の利」です。

現地での信頼できる職人の選定、数千個規模に及ぶランタンの品質管理、そしてそれを日本、ひいては富山県滑川市まで破損なく、計画通りに届けるための確実な国際輸送(ロジスティクス)。これらは、現地での落とし穴を事前に見抜く実戦経験と実務能力がなければ成立しません。アイディアを絵に描いた餅で終わらせず、確実なデリバリーによって具現化することこそが、私たちの介在価値です。

初回のみならず、祭りが年々規模を拡大していくプロセスにおいても、私たちは安定的に本場のランタンを供給し続けました。トラブルが日常茶飯事である海外調達の現場において、現地の空気感を肌で知り、現地語で交渉し、裏方として伴走し続けること。その一貫したコミットメントが、祭りのクオリティと世界観を支える強固な基盤となったのです。

期間中は多くの人で賑わう瀬羽町通り

3. 発展:異文化ミックスが新たな「地域文化遺産」へ(The Evolution)

2010年の初開催から約15年。「なめりかわランタンまつり」は、驚異的な進化を遂げてきました。

メイン会場から周辺のサテライト会場へとエリアは拡大を続け、さらにはベトナムのナショナルフラッグキャリアである「ベトナム航空」が協賛に名を連ねるまでに至りました。単なる地方の「ベトナム風のお祭り」を超えて、両国を繋ぐオフィシャルかつ国際的な文化交流のプラットフォームへと昇華したのです。

ここで最も重要なインサイトは、これが「ベトナムの単なる模倣(コピー)」ではないという点にあります。

ホイアンのランタンという異国の光を当てることで、これまで見過ごされていた滑川の歴史的建造物の「新しい価値」が再発見されたのです。日本の伝統建築とベトナムの幻想的な光が融和したとき、そこには世界中どこを探しても存在しない、独自の「滑川だけの新しい文化」が誕生しました。

今では地元住民の皆様が誇りを持ってこの祭りを支えており、シビックプライド(地域への誇り)の醸成にも深く寄与しています。異文化を受け入れ、自らの歴史とミックスさせることで、新たな「地域文化遺産」が創出された好例と言えるでしょう。


◆「なめりかわランタンまつり」開催情報(2026年)

  • 開催期間: 2026年8月6日(木)~9日(日)
  • フォトDay(予約制): 8月6日(木)・7日(金) 国登録有形文化財「旧宮崎酒造」にて、少人数制の撮影会を開催
  • 本祭: 8月8日(土)・9日(日) 瀬羽町通り周辺(歩行者天国あり)
  • 会場: 富山県滑川市瀬羽町(旧宮崎酒造周辺)
  • 特別協賛: ベトナム航空
  • 公式サイト: https://lanterns.club/

※開催日時・内容は主催者判断により変更となる場合があります。最新情報は上記公式サイトにてご確認ください。


4. 結び:KPCが提供する「Japan Premium」と越境の価値(The Vision)

私たちが展開する「Japan Premium Platform」をはじめとするすべての事業において、根底にある思想は同じです。

日本とベトナムを、単なる「安価な労働力の供給源」や「人口減少を補うための消費市場」として機械的に繋ぐつもりはありません。両国が持つ固有の文化、歴史、そして職人の手仕事に深い敬意を払い、互いの強みを掛け合わせることで、これまでにない新たな価値(プレミアム)を創出すること。それこそが、私たちの考える「越境プロデュース」の使命です。

「なめりかわランタンまつり」で培った、ロマンあふれるアイディアの着想から、泥臭い物流実務、そして長年にわたる文化の醸成までを一気通貫で支えるプロデュース力。この生きた経験は、これからベトナムという未知の市場に挑もうとする日本企業の皆様の大きな力になると確信しています。

市場の表面的なデータを見るだけでは決して辿り着けない、人と人を繋ぎ、文化を翻訳し、ビジネスとして実装する力。そしてこの物語の起点となった彼女は、今もこのプロジェクトの現場に深く関わり続けています。私たちはこれからも、両国の未来を照らす確かな「伴走者」であり続けます。

【個別ブリーフィングのご案内】

この記事の背景にある『さらに深い一次情報』や、現地の生きたネットワークが御社のビジネスに与える具体的な影響について、30分間の個別ブリーフィング(初回無料・オンライン)を承ります。

長年の実戦経験からの視点で、貴社の意思決定のセカンドオピニオンとしてお役立てください。

(ご要望の方はメールにてご連絡ください。)

CONTACT FORM

お問い合わせフォーム

reCAPTCHA